インタビュー記事:第6回 スタインウェイ・コンクール in Japan 大賞 深津天馬さん

第6回スタインウェイ・コンクール in Japanにおいて見事「大賞」を受賞した深津天馬さんに、ドイツで開催されたInternational Steinway Festival後にインタビューにご協力いただきました。数々の難関コンクールに挑まれ、今後ますますの活躍が期待される深津天馬さんの長編インタビュー、ぜひお楽しみください。

2023年の5月〜7月にかけて開催された第6回スタインウェイ・コンクール in Japanにおいて見事「大賞」を受賞した深津天馬さん。深津さんは関東屈指の進学校に通いながら、すでにオーケストラとの共演やリサイタル活動にも取り組んでいる高校1年生(2023年現在)。2022年の全日本学生音楽コンクール中学の部 全国大会でも1位に輝かれるなど活躍目覚ましく、将来を嘱望される若きピアニストです。
深津さんには2023年9月に、スタインウェイ・コンクールの大賞の褒賞である、ドイツ・ハンブルクで行われたInternational Steinway Festivalにご参加いただきました。学業と音楽活動の両立に多忙な合間を縫って5泊7日で、スタインウェイの工場が100年以上前から拠点を構えるハンブルクの空気を存分にご体感いただきました。
2000席の大ホールでの演奏や、他国のコンテスタントとの交流、スタインウェイ工場の見学など、盛りだくさんのプログラムの中でどのようなことを感じられたのか、深津天馬さんの等身大で語られるインタビューをぜひお楽しみください。

■スタインウェイコンクールになぜ参加してくださったのでしょうか?
全日本学生音楽コンクールで1位をいただいた後、海外を視野に入れ始めたころ、2年振りにスタインウェイコンクールが開催されることを公式サイトで知りました。
大賞をとるとハンブルクでのInternational Steinway Festivalに参加できるということに惹かれたうえ、審査員の先生方が錚々たるピアニストの方々だったことから、スタインウェイコンクールに参加させていただきました。

■ハンブルクの街の印象はいかがでしたか?
石やレンガ造りの家が建ち並び、平日の昼からカフェやバルに人が集まるような非常に穏やかな街だなという印象です。 爽やかな過ごしやすい気候で、ずっとここに住んでいたいと思うほど気に入りました!!

■5日間のハンブルク滞在、あっという間に終わってしまいましたが振り返ってみていかがでしたか?
1日1日が驚きと新発見の連続で、非常に濃密な5日間でした!特に、2日目に訪れた聖ミヒャエル教会では、僕の想像を遥かに超える壮大さに圧倒されました。

■Steinway ArtistのStepan Simonian氏からレッスンを受ける機会がありましたが、いかがでしたか?
僕のピアノソロで1時間、僕のピアノと姉のヴァイオリンのデュオで1時間レッスンをしていただきました。レッスンでは情熱的かつ理路整然と教えてくださり、それぞれのアドバイスに非常に説得力がありました。
特にラフマニノフの楽興の時の第3番では、フレーズを長く演奏するための弾き方を具体的に教わり、これまで個人的に悩んでいた演奏法に活路を見出すことができたように思います。

■今回は13名の各国代表のコンテスタントが集いました。他のコンテスタントとの交流はいかがでしたか?
皆さんピアノが上手なのはもちろんなのですが、自分から率先して人に話しかけたり行動を起こしたりする自主性・イニシアティブを強く感じました。空き時間にはホテルのロビーに集まって僕が持ってきたロールピアノ(ピアノのおもちゃ)でピアノコンチェルトからゲーム音楽まで弾きあったのも素敵な想い出です。

■ライスハレのガラコンサートには1200人を超えるハンブルクの聴衆が集まりました。そこでの演奏はいかがでしたか?
日本のボックス型のホールとは違ってライスハレはまるで教会のようなつくりのホールで、会場までもが音楽の世界観を共有しているようでした。
お客様からは演奏後、拍手だけでなく喝采や指笛までもいただき、そのあたたかい雰囲気に感銘を受けました。このような素晴らしいホールと聴衆のなか演奏できたため、本番では緊張することもなく、むしろ楽しんで弾くことができました。

■スタインウェイの工場では、響板の製造工程もご覧になったと思います。実際にスタインウェイピアノが作られる過程をご覧になっていかがでしたか?
あらゆる業界で機械化が進むなか、スタインウェイでは約85%の工程を手作業で行なっているということに衝撃を受けました。
また、一度響板を完成させても傷があったら作り直すという品質への執着にも流石スタインウェイだなと感心しました。低音部や中音部、高音部の響板にそれぞれの高さに合った木材を使っているというところにもこだわりを感じました。

■様々な舞台でピアノを演奏されていると思いますが、深津さんがピアノに求めるものは何ですか?
オーケストラ全体のポリフォニックな響きからその楽器それぞれの音色に至るまでの、多彩な音色やダイナミクスの表現力です。

■5日間、まさにスタインウェイ漬けの日々だったと思いますが、スタインウェイ ピアノへの印象は変わりましたか?
ピアノの工場を訪れるのは人生初でしたが、ピアノのような大きな楽器をできるだけ一枚板で作ろうとするところにこだわりを感じました。特に、一枚板を曲げてピアノの側板を作る機械がピアノのモデルごとに存在していることに驚きました。
スタインウェイはもともと品質へのこだわりがとても強いイメージがありましたが、5日間でそのイメージが確信に変わりました。
また、ライスハレでのフェスティバルの前日にスタインウェイの工場内で練習をさせていただいたのですが、まだ艶出し加工がされていないピアノで弾くことができました。本当に貴重な体験をさせていただきました。

■率直な気持ちで・・・将来スタインウェイが欲しいと思いますか?

スタインウェイは弾き手の要求にすぐに応えてくれるピアノで、本番で弾くならイチバンのメーカーだと思います。だからこそ、将来的に自分のサロンを持つことができたら、そのためのピアノとしてスタインウェイを買えたらいいなと憧れています。
スタインウェイが守ってきた手作りの完璧主義と真似できない新技術の融合に、心の底から感銘を受けました!!

■International Steinway Festivalへのご参加は、自分の将来にどのような影響がありそうだとお考えですか?
ライスハレでの演奏で現地の人々に喜んでもらえたことが本当に嬉しかったです。中には直接「あなたの演奏が好き」と言ってきてくださる方もいて、お客様に喜んでもらうためにピアノを弾くというピアニストの本来の役割を再認識することができました。
また、将来的に国際コンクールに参加するときに各国代表の12人と会えるかもしれないと考えると、すごくワクワクします!

■演奏以外で印象に残っていることがあれば教えてください。
ブラームス博物館に行ったときに特別に、ブラームスも弾いたと言われている1859年製のスクエアピアノを弾かせてもらったのですが、あの古めかしく甘い音色は忘れられません。あまりにも素敵な音のピアノで、自分の演奏に酔ってしまわないかと心配になるほどでした。
楽器博物館では、ありがたいことにスタインウェイに建物を貸し切っていただき、ハープシコードやフォルテピアノ、100年以上前のスタインウェイなどを弾かせていただきました(本当にスタインウェイ初期の製造で、製造番号1万番台のものが・・・!)。
古楽器は想像以上に演奏するのが難しく、皆弾くのに苦戦していました。貴重な経験をさせていただきました。

■その他に伝えたいことがありましたら何でもご記入ください
このような素晴らしい機会をいただいて、スタインウェイには感謝してもしきれません。何にも代えがたい経験をすることができたと確信しています。道中同行していただいたスタインウェイの社員の方にも本当にお世話になりました。
これからもお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。


|編集後記|

大観衆を前にした海外のステージに立つことや、他国のコンテスタントと交友関係を深めることは、演奏テクニックとはまた違った素養が求められると言えるでしょう。他のコンテスタントへ自ら積極的に声をかけたり、持参したロールピアノを使った遊びに誘ったりする中で、自然と参加者の中心にいるようなシーンも多かった深津さんからは、そうした演奏以外の人間的な魅力も感じるフェスティバルでした。
演奏されたラフマニノフの「楽興の時」は深い感受性や表現力を要する曲の一つと言えますが、円熟みまで感じさせるような重厚感や長大なフレージングをもって見事に弾ききり、ハンブルクの聴衆からも一際大きな喝采を得ていました。

ハンブルクから東京は現在直行便がなく、羽田空港に降り立ったのは夜11時過ぎ。ハードなフェスティバルの後に、15時間以上のフライトで疲労も溜まっているはずですが、日本に帰ってきた深津さんの顔からは充実感が溢れていました。
きっと沢山の刺激を受けて、新たな目標を見据えて、明日からもまた音楽・ピアノと向き合われるのでしょう。深津天馬さんのこれからのご活躍をとても楽しみにしております

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