―イベントレポート ―
かてぃんピアノをSteinwayの空間で 

(2023年7月24日〜7月30日)

角野隼斗氏と全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)が協働して運営する「角野隼斗 Upright Piano Project "Piano for Myself "」の第一弾として、北青山のスタインウェイ直営店「スタインウェイ&サンズ東京」のホールにかてぃんピアノの展示を行いました。
非常に多くの方にお越しいただき、最終日にはなんと角野氏ご本人も現れるというサプライズにも恵まれましたので、少しカジュアルなブログ調になりますが、イベントレポートを制作しました。演奏の動画なども本文中にございますので、ぜひお楽しみください!


まず、かてぃんピアノを展示したのはスタインウェイ&サンズ東京に併設する、約40名収容のサロン。「世界に一つしかない特別なアップライトピアノの音や、自分の音楽と向き合える」というコンセプトから、やはりステージやホール中央ではなく壁沿いに設置しました。
壁面には内田光子氏やクリスチャン ツィメルマン氏を始めとする、スタインウェイ アーティストの絵がずらりと並び、偶然にもアップライトを弾くとツィメルマン氏と目が合ってしまう場所に。
ショールームの予約状況の兼ね合いで各日2時間での開催となったことや、第一弾ということもあって、何名くらい来場されるのだろうか…と不安と期待の両方を抱えながら迎えた当日。

7月24日の16時前、日中の暑さのピークを過ぎたとはいえまだまだ熱を保った空気の中、大変ありがたいことに平日にも関わらず20名以上の方がショールームの前に並んでくださいました。角野隼斗さんやこのプロジェクトへの期待や注目度の高さを改めて実感します。2023年のツアー"reimagine"のステージで使われたピアノを実際に弾ける、というのですから確かに貴重な機会ですよね。
筆者もツアー中の公演に伺わせていただきましたが、琴線に触れる温もりある音色、静謐な空気感に魅了され、時間や空間を慈しむ気持ちを思い出したひとときだったのが蘇りました。
ご来場された方は、ピアノを弾く方もいれば、弾かないけれどもピアノを近くで見たいという方もいらっしゃり、年齢やピアノへの向き合い方も十人十色。ただ共通して感じたのは、音楽やピアノ、そしてアーティストへのリスペクトの念でした。混み合った室内にも関わらずお互いの演奏を静かに聴き合ったり、ピアノはとても丁重に取り扱ってくださるなど、主催者としてはありがたい環境をご来場されたお一人お一人が作ってくださいました。

ニューヨーク製のスタインウェイ アップライトピアノの「かてぃんピアノ」には、角野氏がこのピアノに求める音色に近づけるための整音・整調、そしてフェルトやセーム革など独自の工夫が施されています。その特長を最大限活かすためでしょうか、ご来場者が演奏される曲は、全体的に内省的な印象や少し悲しさや儚さを感じる曲が多かったように思います。
想像以上に多くの方が来場され、常時何十人もの方が見守る中で、ホールで演奏するというのは通常の街角ピアノとは違った緊張感があったはずです。それにも関わらず、多くの方が演奏を始めると素晴らしい集中力で、自分の音と向き合いながら美しい音で演奏なさることにスタッフ一同驚くばかりでした…!
当日弾いてくださった方で、撮影・掲載の許可を快くいただいたこちらの演奏では、坂本龍一さんの「Aqua」を奏でてくださいましたが、温もりある慈悲深い音色が本当に素敵でした。

老若男女たくさんの方々が、淀みなく素敵な演奏をされるのを拝見していると、つい「このピアノなら簡単に良い音が出せるのではないか」と安直に考えてしまいましたが、そうは行きません。難しさや苦労は身を持って知るべし、ということで筆者も"一発録り"に挑んでみましたが、想像の何倍もの種類の音色が出てくるピアノをうまく操ることができず惨敗でした。
初めて触るピアノであることや、練習とは全く異なる緊張感がある中での演奏にも関わらず、勇気を持って弾いてくださった方々へ改めて尊敬と感謝の念を心に刻む良い機会になりました。そして、ツアー中に2台のピアノをステージで上手く使い分けること、これは想像以上に難しいことなのかもしれません。客席で聴いていると、非常に自然な表現や演奏によってその難しさを感じ取れなかったのですが…

そして、連日100名超の方々が来場されていた中での最終日、7月30日にはなんと角野氏ご本人がサプライズで登場!
ホール後ろのカーテンに隠れて、そこから登場するという演出に、まさか本人がいらっしゃるとは思わずに来場された方からは悲鳴に近いような声も。
ご自身が作曲した「追憶」などを含む複数曲をその場での響きを楽しみながら演奏されたことに加え、この「かてぃんピアノ」がこれから全国様々なところに旅をしていくことへ、我が子を見送るようなお気持ちでメッセージをいただきました。
超過密なスケジュールの中でも、プロジェクトの様子をご自身で立ち寄ってご覧になる責任感や想いの強さに、私たちも心打たれながら演奏を聴いていました。前日に山形県で公演をされた後にいらして、その日のうちに海外へ飛んで行かれたとか…
これからもお身体に気をつけながら、ご活躍されることを楽しみにしています!

先日、このかてぃんピアノはスタインウェイの保管庫から新しい場所に向けて出発しました。
福井県鯖江市の「サンドーム福井」という、東京からは遠く離れた日本海側の街で、また多くの出逢いや音楽に恵まれると思うと、私たちもその旅路に心躍る気持ちです。角野さんのツアー”reimagine”を皮切りに、スタインウェイ&サンズ東京に渡されたバトンが全国各地で繋がっていくことは、何とも形容しがたい夢があるようなストーリーに思えます。
(9月9日からのプロジェクトはこちら→ https://cateenup.piano.or.jp/news/2023/08/fukui_monodukuri.html

ピアノは弦楽器や管楽器と異なり、移動が難しいという性質上、「家に置かれているもの」という位置付けをされることが相対的に多い楽器です。街角ピアノの普及から、ピアノが誰でも演奏できる公共の場に置かれるケースが増えているものの、そのピアノが全国津々浦々を巡る例は珍しいですし、スタインウェイのピアノともなると過去になかったことかもしれません。

りんごや鉛筆などの有形物は分け合うと一人が楽しめる量が減ってしまうのに対して、音楽は分かち合っても減るものでない、むしろ感動の総量は増えていく類のものと捉えることもできるかもしれません。一台のかてぃんピアノがこうして移動して、全国の方々とシェアされることで、弾いた方や聴いた方が少しでも幸せを感じる瞬間を得られる、そうしたポジティブな循環が生まれていくことを願っています。

偶然お店にいらした時にかてぃんピアノを弾いてくださった務川 慧悟氏の演奏に巡り合ったのも、このピアノの運命(さだめ)だったのかもしれません。富山や広島など各地でプロジェクトが控えているこのピアノが、これからどのような運命をたどり、新しい道を作ってくれるのか、、、想像もできなかった素敵な巡り合わせに恵まれるような気がしてなりません。多くの方が大切に音楽を紡いで、次の人・場所にバトンを渡していく、まだ終わりの見えないバトンリレーの行く末を楽しみに見守っていきたいと思います。

アップライトピアノ K-132

現在生産されているスタインウェイ唯一のアップライトピアノは、高さ132cmの"K-132"です。大量生産ではなく、最高品質のグランドピアノと同じ工場・技術者・素材を用いて作られる、スタインウェイ&サンズの名にふさわしいアップライトピアノです。限られたスペースでも、無限に広がるような表現力やダイナミックレンジを感じさせるK-132、詳しくはこちらからご覧ください。

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